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Yuji's Blog

江戸、か

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江戸、か

──江戸、か。確かにあの頃は食う物に困ったとしても、皆笑っていた。だが今はどうだろう、名が売れるようになって生活も困らなくなったというのにギスギスしている。

山南さんも辛かろう。きっとあの左腕は戦闘には耐えられない。剣士として生きたかった人だからこそ、余計に苦しんだではないか。

 

 

「沖田はぁん、Accounting Services hong kong 鈴さぁんッ!ワシも仲間に入れてくれや…ァ。寂しいやんかッ…!」

 

 

泥酔に近い松原は二人の間に割り込んでは、それぞれの肩に手を回した。

 

「わ、松原さん…。随分出来上がってますね」

 

「忠さん…臭いですよ」

 

 

二人の苦笑を受け、松原は太い眉毛を八の字にする。

 

「なんや、酷いやないかァ…。姐ちゃんも酌する相手がおらんかったら、商売上がったりやと思て…」

 

松原はクスンと鼻を啜り、大袈裟に悲しむフリをした。沖田と桜司郎は顔を見合わせると、笑みを浮かべる。

 

「分かってますよ、有難うございます。大した話はしていなかったのですがね…。山南総長の最近のご様子について、桜司郎君と意見を交わしていました」

 

沖田の言葉に、松原はこめかみを搔いた。思い返すように視線を天井へと彷徨わせる。

 

 

「せやなァ……。土方副長と言い争う頻度は増えた気はするな。問題になっとらんから、些細な事やとは思うんやけど」

 

それを聞いた沖田は瞳を伏せた。

 

土方はどうしても伊東を受け入れられないが、山南は伊東に対して友好的である。

山南としても伊東は同門の絆があるため、邪険に扱われるのは見て見ぬふりは出来ない。

土方は土方で、試衛館で切磋琢磨した仲の自分より伊東を庇うことが面白くなかった。

 

意外と頑固な山南と、意地っ張りな土方が衝突するのは火を見るより明らかである。

 

それでも互いを尊重し合っている面もあり、本気で敵意や悪意をぶつけている訳ではなかった。

 

 

しかし、後日。山南と土方が決定的にぶつかる出来事が起こることになるとは、この時誰も想像すらしなかった。年末を直ぐそこに控えた年の瀬の話である。

誰が先に言い出したのか、屯所が狭いという話になった。

 

組頭は二、三名で一つの部屋と優遇されているが、平隊士に限っては の雑魚寝に近かったのである。

 

冬こそまだ良いが、夏に限っては地獄を見ることは間違いなかった。

 

 

そこで、いよいよ屯所の移転を検討する段階になって来たと幹部総出で重い腰を上げたのである。

 

前川邸の一番広い居間に集まったのは、近藤、土方、山南、伊東、斎藤、永倉、原田、松原、武田の九名だった。

 

沖田と井上は巡察の為、不参加となる。

 

 

「新撰組の知名度は良くも悪くも上がってきたとは云えよォ、この京で受け入れてくれる場所なんて無ェんじゃねえの」

 

何処か微妙な空気を切り裂くように、原田が発言した。それは誰もが思っていたことだった。

 

 

「いや、一つだけあるぜ」

 

「本当か、土方君」

 

腕を組んでじっと黙っていた土方は口を開く。重低音の声が部屋全体に轟いた。

 

 

「西本願寺、だ。流石に全部寄越せとは行かねえが、一角を拝借しよう。境内はだだっ広いし稽古に向いている」

 

その発言に、部屋の中はざわつく。西本願寺とは、読んで字のごとく寺院だ。幕府ご恩顧の郷士の前川邸や八木邸を借りるのとは話が異なる。

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